名古屋地方裁判所 昭和48年(わ)981号 判決 1973年9月21日
本籍
愛知県知多郡武豊町字小迎一八四番地
住居
名古屋市千種区赤坂町四丁目一九番地
バー・飲食店経営
荒木勇夫
昭和五年一月二三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官 道生出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月および罰金三五〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市千種区赤坂町四丁目一九番地に居住し、同区覚王山通り四丁目二番地今池会館ビル内でバー「女王蜂」を、昭和四五年五月から同ビル内でバー「女女」を、同四六年七月から愛知県渥美町大字伊良湖字宮下三、〇〇〇番地の二四で飲食店「伊良湖シーバレス」を経営しているほか、同四五年六月から同四七年四月まで名古屋市中区栄二丁目四番地柏屋ビル内でバー「赤い花」を経営していたものであるが、所得税を免れようと企て
第一、昭和四五年分の総所得金額はすくなくとも一五、二七四、六六四円で、これに対する所得税額が五、八五一、六〇〇円であるのに、売上げの一部を除外し、かつ、バー「女王蜂」が実姉荒木冬子、バー「女女」が妻荒木信子の各経営であるかの如く偽り、それぞれの名義で所得税の確定申告書を提出するなどし、よつて得た収入を架空名義で預金するなどして秘匿したうえ、昭和四六年三月一〇日名古屋市中区三の丸三丁目三番二号所在名古屋中税務署において、同税務署長に対し総所得金額が三、八五二、〇〇〇円、これに対する所得税額が一七一、五〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、右不正の行為により正規所得税額と申告所得税額との差額五、六八〇、一〇〇円をほ脱し
第二、昭和四六年分の総所得金額はすくなくとも二二、五七六、七〇四円で、これに対する所得税額が九、九〇二、九〇〇円であるのに、前同様の方法で所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五日前記名古屋中税務署において、同署長に対し、総所得金額が二、〇一〇、〇二五円、これに対する所得税額が零である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により正規所得税額と申告所得税額との差額九、九〇二、九〇〇円をほ脱し
たものである。(本件各所得の確定は財産増減法により、犯則年度における修正貸借対照表、ほ脱所得の内容および脱税額の計算関係は本判決末尾添付の別紙(一)ないし(六)記載のとおりである。)
(証拠の標目)
判示事実全般につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書一四通
一、被告人作成の上申書一五通
一、大蔵事務官倉田敏一作成の脱税額計算書説明書
一、荒木信子(三通)、荒木冬子、小島伸芳(三通)に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、荒木信子、荒木冬子、小島伸芳の検察事務官に対する各供述調書
一、山田太一、関野豊秋(三通)、中村嗣郎(二通)、藤井拓郎、山口健吉、前田荘作、杉浦英明、伊藤日出男各作成の証明書
一、鬼頭忠義、佐治末吉、山田源八作成の上申書各一通
一、山崎之裕、上田新一、佐藤武彦、原みさ子、古川亘、豊田清一、中野政雄、舟橋浩一、宝富彦、吉田和己、伊藤泰行、鈴木康雄作成の回答書各一通
一、中村淳、渡辺男、遠藤昭二郎、木下的英、伊藤一成、本多美起子、中村正郎、杉浦 三、山田きくゑ、山田源八に対する大蔵事務官の質問てん末書各一通(但し中村淳に対する分は二通)
一、千種税務署長、千種区長、愛知県東新県税務所長、同新栄県税事務所長作成の回答書各一通
一、大蔵事務官榊原栄一作成の現金、有価証券等現在高確認書および同中山能男、同山本忠郎作成の調査報告書各一通
判示第一の事実につき
一、土方茂生(昭和四六年三月一〇日荒木勇夫申告分)、沖島実(同年三月九日荒木信子申告分、同月一五日荒木冬子申告分)日比野佳彦、山田太一、永草宏、桑名恵美子、福井武男、平松敬子、井上美智子、丹羽一正、山口健吉各作成の証明書
一、田中英夫、半田昭彦、須賀洋子、松村駕、近藤裕子、井上光明、小林秀吉、平松美恵子、加藤政之、西前嘉弘、磯部政子、原功一作成の回答書各一通
一、原武雄、伊藤真光、彦坂栄次に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、大蔵事務官中山能男作成の脱税額計算書(昭和四五年一月一日より同年一二月三一日までの分)
判示第二の事実につき
一、土方茂生(昭和四七年三月一五日荒木勇夫申告分)、沖島実(同日荒木信子申告分、同日荒木冬子申告分)稲益正明、細川礼子、児玉利彦、中村豊、井上寿恵男各作成の証明書
一、井関輝義、香山智恵、石井騒、竹川邦雄、鬼頭善輝、名古屋中税務署長作成の回答書各一通
一、榊原敬治、高洋二に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、大蔵事務官中山能男作成の脱税額計算書(昭和四六年一月一日より同年一二月三一日までの分)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重き判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法四八条二項によりその額を合算し、その刑期および罰金額の範囲内において、被告人を懲役六月および罰金三五〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状に鑑み同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日より二年間右懲役刑の執行を猶予する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木雄八郎)
別紙1
修正貸借対照表
過少申告脱税犯
昭和45年12月31日現在
<省略>
<省略>
別紙2
修正貸借対照表
過少申告脱税犯
昭和46年12月31日現在
<省略>
<省略>
別紙3
ほ脱所得の内容(1)
自四五、一、一
至四五、一二、三一 △印は減
<省略>
銀行預金の計上もれで、その内訳は次のとおり
<省略>
貸付金の担保としての受取手形の減少高で、内訳は次のとおり
<省略>
貸付金の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
車輛の売却による未収入金の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
権利保証預け金の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
器具備品の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
車輛減少高の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
船舶の減少高の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
土地の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
営業権の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
電話加入権の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
事業主貸の計上もれで、支出の内訳は次のとおり
<省略>
未払金 △一、四四四、七九五 未払金増加高金の計上もれで、認容する。内訳は次のとおり
<省略>
支払手形の増加高計上もれで、認容する。内訳は次のとおり
<省略>
借入金増加高の計上もれで、認容する。内訳は次のとおり
<省略>
預り金の増加高で認容する。調査総売上金額に対する料理飲食等消費税相当額のうち未課税のものを預り金として認容するものである。その内訳は次のとおり
<省略>
預り金 △八、五二二、六八九
上記の店舗別の内訳は次のとおり
<省略>
事業主借で認容する。内訳は次のとおり
<省略>
非事業用貸付金の貸倒損で、否認する。内訳は次のとおり
<省略>
車輛の譲渡による譲渡益で、認容する。内訳は次のとおり
<省略>
<省略>
別紙4
ほ脱所得の内容(2)
自四六、一、一
至四六、一二、三一 △印は減
現金の計上もれで、その計算は次のとおり
<省略>
銀行預金の計上もれで、その内訳は次のとおり
<省略>
貸付金の担保としての受取手形の減少高で、内訳は次のとおり
<省略>
貸付金減少高の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
車輛の売却による未収入金減少高の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
器具備品の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
車輛の計上もれで内訳は次のとおり
<省略>
船舶の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
建物(四六年八月に完成した伊良湖シーバレス)の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
営業権減少高の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
電話加入権の計上もれで、計算は次のとおり
<省略>
事業主貸の計上もれで、支出の内訳は次のとおり
<省略>
未払金増加高の計上もれで、認容する。内訳は次のとおり。
<省略>
支払手形の減少高の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
借入金減少高の計上もれで、内訳は次のとおり
<省略>
<省略>
上記の店舗別の内訳は次のとおり
<省略>
事業主借で認容する。内訳は次のとおり
<省略>
非事業用貸付金の貸倒損で、否認する内訳は次のとおり
<省略>
車輛の譲渡による譲渡益で、認容する。内訳は次のとおり
<省略>
<省略>
別紙5
脱税額計算書(1)
自昭和45年1月1日
至昭和45年12月31日
<省略>
税額の計算
<省略>
別紙6
脱税額計算書(2)
自昭和46年1月1日
至昭和46年12月31日
<省略>
税額の計算
<省略>